恋口の切りかた
昔、平司が私のことを悪く言った時と同じだった。

エン、本気で怒ってる……。


「少なくとも、あなた様の知らぬ過去を知っていますよ」

女の身とは言え、これが元盗賊だった渡世人というものなのか、

正慶は一歩も退かず、泰然とした態度で円士郎に言い返した。

「円士郎様は仙太という名すら知らなかったご様子ではありませんか。過去も明かさぬ男を信用なさるのですか?」

「過去は関係ねェ……! あいつがどういう奴かは、テメエより理解してるつもりだ」


低い声で言う円士郎のセリフを聞いて、


「私もだよ、エン。遊水さんは、悪い人じゃないと思う」


膝の上で握りしめている円士郎の拳の上にそっと手を置いて、私は言った。


「留玖──」

すると円士郎は、ハッとしたような表情になって──


視線を泳がせて





「あいつも、盗賊だ」

と、言った。





「えっ……」

私は凍りついた。

「今は違う。でも、昔盗賊だったと──その時の名が『仙太』だと──そう聞いた」
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