恋口の切りかた
ふう、と鳥英が震える息を整えるように吐き出した。

「天罰かな、これは」

「え?」

「虹庵殿の気持ちが今、少しだけわかったよ」

「…………」


俺が言葉を探していると、「私もだよ、円士郎殿」と鳥英が言った。

「もしも遊水に出会っていなければ──……でも今はもう、円士郎殿と一緒になっても、たぶん遊水のことを忘れられない」

「遊水と一緒になれたら、俺のことは忘れられるってことかよ」

少しムッとしながら俺が言うと、

ははっと、鳥英はいつもの彼女らしい笑みを見せた。

「そういうことだ」

「このアマ……!」

顔を見合わせて、俺たちは少しの間笑った。

「……遊水と会うのが怖い」

ひとしきり笑った後、再び彼女が俺の胸に顔を押しつけて言った。

「どんな顔をして会ったらいいのか──わからないのだよ」

俺は、話題が同じ問題に戻ってきたのを感じた。


「遊水は──駄目だ。諦めてくれ」

「今さら──っ……」


何か口にしようとして勢いよく顔を上げた彼女は、怪訝そうな表情になった。


「円士郎殿……?」
< 1,041 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop