恋口の切りかた
留玖と遊水が──なんでここに……

って、そりゃ、訪ねてくることもあるか……


俺の頭はボンヤリとそんなことを考えて、



留玖の足下には、彼女が取り落としたらしい畳んだ唐傘が転がっていた。



ざあざあと雨の音だけが聞こえて──



俺は今の状況がこの二人の目にどう映っているかを想像して、



血の気が引いた。



薄暗い部屋の中。

俺に抱きついて泣いている鳥英と、

それを抱きしめている俺。


ついでに、


ばさっという、留玖が傘を落としたと思われる音が響いた時、俺と鳥英は無言で見つめ合っていた。



「留……ちがっ……これは……」


俺が、からからに干上がった喉から何とか声を出そうともがいて、それが達成されるよりも早く、


「……ご、ごめんなさい」


真っ青な顔で、留玖がぺこりと頭を下げた。
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