恋口の切りかた
「……へっ……? ごめんなさいって……留玖……」

「ごめんなさい。私、何にも知らなくて……ご、ごめんなさいっ」


留玖はたちまちきびすを返し、落とした傘を拾おうともせずに雨の中に飛び出して、走り去ってしまった。


「留玖ィ──!?」


俺の声が空しく長屋に響いた。


う、うわあああああ──っ!?


や、やべェ!!

完璧に誤解されたっ!


固まったままの俺と、未だにその腕の中にいる鳥英に、

今度は戸口に残った遊水から冷ややかな視線が突き刺さった。

「いつまで抱き合ってんのか知らねェが……こいつは本当に邪魔したようだな」

そう吐き捨てると、遊水もまたくるりと背を向けて戸口から歩み去った。

こっちはしっかり傘を差してからだったが。


「違う──ッ!?」

二人の姿が消えてから、無意味な悲鳴を上げて俺はようやく鳥英の体を離した。
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