恋口の切りかた
すぐさま留玖の後を追って走り出そうとする俺の袖に、


鳥英がしがみついてきた。



「どうしよう……円士郎殿……!」


鳥英は完全に色を失っていて、


「すまない……私のせいで……おつるぎ様にまで……」


そう言いつつも、頭の中は今の場面を遊水に目撃されたことでいっぱいの様子だった。


「いや。俺のほうこそ、悪かった」


俺も口では謝りながらも気が気ではなくて、鳥英を振り解いて直ちに留玖を追いかけたかったのだが──

この状態で鳥英を置き去りにするワケにもいかず、二人が消えた戸口と鳥英とに視線を何往復かさせて、


鳥英の両肩をつかんだ。


「おい、落ち着け!
大丈夫だ、二人は俺が今から追いかける。あんたは遊水にちゃんと説明しろ。俺のことは──心配するな。
留玖も説明すれば、きっとわかってくれる」


俺が説明したところで留玖がわかってくれるかに関しては、甚だ不安だったりするのだが──


「待……」

後ろから追いすがってきた鳥英の声を置き去りに、俺は戸口の自分の傘と、土間に転がった留玖の傘をひっつかみ、今度こそ雨の中に飛び出した。
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