恋口の切りかた
俺は端的に説明した。

「今のは、誤解だ」

「それだけかい!」

我ながら端的すぎる気がした説明に対して怒鳴りつけられたのかと思ったら、遊水は吹き出していた。

もっとも、その笑い方というのは随分と皮肉っぽいもので、相変わらず怒りを含んでいるのが見て取れた。


直接的に感情をぶつけて来ない分、なんつうか……こいつの怒り方って怖ェぞ。


俺は急いで言葉を足した。

「彼女が泣いていて、俺が胸を貸してやっただけだ」

「何だそりゃ」

遊水の反応は至極ごもっとも。
俺が聞いても何だそりゃだ。
自分でももう少しマシな言い訳をしろと思わなくもなかったが、

俺には、浮気がバレた間男のようにグダグダと弁解の言葉を並べ立てる気はさらさらなかったので、

「俺にも彼女にも疚しいことは何もない」

胸を張って宣言した。

──まあ、やり取りの中には、どう見積もっても「冗談で口説こうとしたら告白されて断った」という解釈になる、シャレにならない会話も含まれていたが──

鳥英に手を出したワケじゃねえし。

ここは堂々としていることにした。


「この状況で──信じられねェ態度だな」

と、遊水があきれた様子で、白い顔に皮肉たっぷりの氷のような笑いを作った。
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