恋口の切りかた
遊水が鳥英の素性を何もかも知った上で、彼女を弄んでいただけならばどれだけ良かっただろうと思った。

やはり二人を会わせるべきではなかったのだと俺は後悔して


「俺が彼女の素性を知らなきゃならねえワケでもあるのかい」

「そうだよ!」


遊水は困惑したように俺を眺めた。


「知っとけよそのくらい! 無責任すぎるだろうがッ!」

「円士郎様が何をそんなにムキになってんだか知らねェが……彼女が武家の女だってことくらいなら気づいてるぜ」

「……っ彼女は──あんたが手を出していいような女じゃない」

「円士郎様こそ、随分とらしくないことを仰るじゃねェか。そんな口出し……」

「野暮だろうが何だろうが、俺には彼女を守る責任がある!」

「は。そりゃまた──」


遊水は嘲り、さっき抱き合ってたのも本当に誤解ってワケじゃなさそうだな、と言った。


「違──」

「円士郎様か……結城家に何か縁のある女ってことかい」


一気に体温の下がった俺が否定するよりも先に、遊水はじっとこちらを見つめたまま、俺を遮ってそう口にした。

どうやら今のは冗談で、俺の真意は的確に汲み取られていたようだった。

さすがにこの辺りは頭の回転が速い。


遊水は、疲れたように溜息を一つ吐き出した。
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