恋口の切りかた
「円士郎様」

緑色の瞳は、暗い空を弱々しく見上げた。


「俺の人生は誰かを欺いてばかりだ。
だから一人くらい──本当に互いに何も知らないんだと言える女がいても許されるかと思った。

だが、それは許されねえことなのかい?」


ぐ……っと俺は言葉に詰まって、



それでも、

答えた。



「ああ。許されねえ」



「……そうかい」



「俺はもうこれ以上、鳥英が不幸になるところは見たくねえ」



そしてこの男自身が不幸になるところも、見たくはない。



心の中で付け足して、

俺は留玖を探すために、雨の中を通りに向かって走り出した。
< 1,051 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop