恋口の切りかた
【剣】
頭上で雷鳴が轟いていた。
雨がほっぺたに当たって痛い。
まるで顔に小石のつぶてを受けているようだった。
私は、
ぬかるんだ足下から跳ね上がった泥水が袴の裾を汚すのも構わず、
天から落ちてくる雨糸の中を、勢いよくぶつかりながら体で切って走って──
走って
走って
走り続けた。
なんで私、走ってるのかな。
何から私、逃げてるのかな。
昼過ぎに、円士郎が雨の中を鳥英のところに行くと言って出かけて行って、
その後に、鬼之介が──
「『天照』のカラクリを突き止めた」
屋敷にやって来て、盛大なクマのある顔でそう言って、
円士郎がいないと告げると、宗助に調べてもらいたいことがあるから今すぐに彼を借りたい、円士郎の命を救うためだと言うから──
円士郎の命なくば勝手には動けないと断る宗助に、円士郎には私が今から伝えに行くと言って屋敷を抜け出した。
それなのに。
エンに、伝えるの忘れちゃったな。
何してるのかな、私……。
だって、エンが鳥英と──
脳裏には抱き合っている二人の姿が焼きついていて、
どんなに走っても追いかけてきて
振り切ることができなかった。