恋口の切りかた
どこをどう走ったのかわからなくて

気がついたら足元が冷たくて、浅瀬に立っていた。

濁った水が、袴を濡らして流れている。


川の中だった。


近くの岸辺には、季節が終わりを迎えているのか、散りかけた紫と白のアヤメの花が雨に濡れて無数に咲いていた。


見回すと覚えのある土手があって、離れた場所に太鼓橋が見えて、

私が立っていたのは、城下を流れる川の浅瀬らしかった。


あれれ。
どうして私、こんな場所に来ちゃったのかな。


ほっぺたを伝い落ちた雫が、後から後からしたたって、私の膝の下までしかない濁った水の流れの中に消えていった。


川に浸っている袴だけではなくて、
肩も着物の袖もひんやり冷たくて、

いつの間にか私は全身ずぶ濡れになっていた。


頬を流れる水は温かかったけれど
きっとせわしなく光っている空から落ちてきた雨だ、と思った。


傘、

持ってたはずなのに……どうしたんだろう。


どうして、こんなことになったのかな……。



屋敷を出て、
円士郎が向かった鳥英の長屋へと行く途中、鳥英に用があると言う遊水に会った。

一緒に鳥英の長屋に着いたら、戸口が開きっぱなしになっていて、

入ろうとしたら、

中で、

二人が……
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