恋口の切りかた
ヒュッという風切り音が、少し離れた場所から聞こえた気がして、

ぼうっと濁流を眺めていた私は我に返った。


これまでまるで無音の中にいたかのように、
急に、
ごうごうという川の音や、岸辺の草むらを叩く雨音が耳に飛び込んできた。


首をめぐらせると、


少し離れた草むらの中に、見慣れた顔の人間がいた。



秋山隼人だった。



つんとした目尻の、猫みたいな若い侍は、
道場で目にするような稽古着姿で

私にはまるで気がついていない様子で、一心不乱に刀を振るっていた。


腰の脇差し──小太刀を、
抜いて
雨糸を斬って
納める。

その動作を何度も繰り替えす瞳は、
普段のヘラヘラしたものとは全く違っていて、

あの廃寺の外で垣間見たのと同じ

刀のように研ぎ澄まされた
鋭く冷徹なものだった。
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