恋口の切りかた
隼人があまりに凄い剣幕だったので、わけがわからず私がぽけっとしていたら、

近くまでやって来た隼人にいきなり腕をつかまれた。


「や……っ」


びっくりして振り解こうとすると、隼人は私の顔を覗き込んで一瞬困ったような表情になり、

すぐに真剣な表情に戻って、有無を言わさぬ力で私を川から引きずり上げた。


川から上がった隼人は、紫と白の花の間で大きく息を吐いて、濡れた袴の裾を絞った。

「まったく、早まった真似はしないで下さいよ……!」

「……へ?」

「何があったか知りませんけど、入水自殺なんて……」


私は固まった。

入水自殺──!?


「し、しませんよそんなことっ」


私は大急ぎで否定した。


「ならいいんですけど」

言いながらも、隼人は疑るような目を私に向けていて、


「そんな顔で川ん中に立ってるから、俺はてっきり……」


そう言えば、前に橋の上で水面を見つめていたら、遊水にも似たような勘違いをされたことを思い出した。

私って、
嫌なことがあると、川を眺めたくなるのかなあ、なんて思って


またそんな風に間違われるなんて、私は今どんな顔をしているのだろうと思った。

あんな場面を目撃してしまって──
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