恋口の切りかた
「いやいや」

隼人が引きつった笑いで手をぱたぱた振った。

「いやいやいやいや! 有り得ないでしょ。正気ですか!
いきなり何を言い出してるんですかアナタ」

自分でも、何を言っているのだろうと思いつつも、


私は
瞼の裏に焼き付いてしまって離れない、円士郎と鳥英の姿を消し去ってしまいたくて、

何が一番、自分を今の状態から自由にしてくれるのかを知っていて、


未知の腕前を持った達人を前にして、いつものように自分の中で蠢き始めている感情にすがることにした。


「私は、蜃蛟の伝九郎と刀を交えています」

隼人の顔から笑みが消えた。

「……そんなこと言ってましたねえ、前に」

蜃蛟の伝九郎。

鈴乃森座の前で私や円士郎、鬼之介に斬りかかってきた、ニタニタと笑いを浮かべた剣客。

河原で一人剣を振るっていた隼人の胸の内に、その名前が存在していたのだろうということは想像できた。

「どんな剣を使う奴でした?」

訊いてくる隼人の目には再び、先刻も見た剣呑な刃の輝きに似た光が灯っていた。

「私に似た剣を使う人でした」

「…………」

明らかに、隼人の顔つきが変わった。
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