恋口の切りかた
私はあの時の、蜃蛟の伝九郎の動きと表情と、言葉とを思い浮かべた。

「伝九郎自身も言っていました。私と彼は似ていると」

斬りかかってきた伝九郎は、楽しそうだった。

斬り合いが
楽しくて楽しくて、
好きで好きでたまらない、
そんな剣だった。

「体格なら円士郎のほうが近いかもしれないですが……剣の使い方──戦い方は、私と似ています」

隼人はじっと黙って私を見つめていたが、

「真剣で?」

やがて、開かれた口からはそんな言葉が飛び出した。

「ここでやり合うんですか?」

「はい」

「そんな稽古は、やったことありませんね」


隼人は、どうやら俺も正気じゃないようですと一つ大きく嘆息してから、
懐を探って、髪結い紐を二本取り出し、

ニコリともしない顔でそのうち一本を私に差し出して、


「これを首に巻いて、切られたほうが負けです」


と、言った。



空で雷鳴が狂ったように響き、叩きつける雨の音が一層大きくなった。
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