恋口の切りかた
「こんな夜中に、お若い御武家様が二人で──こいつはまた、何の真似ですかい?」

とぼけた内容を口にして、兵五郎はそこら中に倒れ伏してうめきを漏らす子分たちを眺めた。

「すっとぼけてくれるじゃねェか。
留玖を返してもらおうと思って来たら、なかなかテメエに会わせようとしないんでな。
こいつらには軽く挨拶させてもらったぜ」

俺は今にも斬りかかりそうになるのを何とか踏み止まって低くそう言った。

聞いていた隼人がまた頭を押さえて、

「まるっきり渡世人同士の会話だな。本当に結城家の御子息かよ、アンタ」

などと、ブツブツ零した。


「俺の妹はどこだ? 今素直に返せばこの一家、半壊程度で済ませてやるぜ」

俺は兵五郎に刀の切っ先を向けて告げた。

半壊はさせんのかよ、と横で隼人がまたボソッと呟く。


「さて、何の話でございやしょうかねェ」

貸元はニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべた。

「妹君を返せ、とは……はて? 何か勘違いをされているのではありませんか?」

どうやら予測したとおり、相手は完全にシラを切り通すつもりのようだった。
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