恋口の切りかた
完全に笑いを消して、貸し元は頬のこけた顔でこぼれ落ちそうに両目を見開いて、

無表情に
じいっと食い入るように
俺たちを見つめた。


無言の凄みがあった。


「ほォオ、こいつは見くびってたな」


しばしの沈黙の後、兵五郎はやはり無表情なままで、
先程までとは打って変わった低く静かな声音で言った。


「フン、武家のお坊ちゃまの道楽かと思ったら、『闇鴉』についてまで知ってたか」


だったら話は別だ、と言って、兵五郎はくるりと背を向けた。


「どうぞこちらへ。そういうことなら、奥でゆっくり話を致しやしょう」


「しかし、親分……!」

そばにいた取り巻きが、何やら慌てた様子で口を開きかけて、

「黙れ」

ゴリッとした冷たい塊を含む口調で兵五郎が一言放って、取り巻きはごくりと唾を飲み込んで沈黙した。


「どうしやした? どうぞこちらへ」


俺たちに背中でそう繰り返し、貸元は店の奥へと歩いて行く。


俺と隼人は視線を交わし合って、


その後に続いた。
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