恋口の切りかた
「おい」と隼人が俺に声をかけた。

「こういう場合は、どうなる?」

「……何がだ?」

「斬り捨てて何か問題があるか?」


隼人の全身から滲み出る気迫に、俺はやや気圧されながら「いいや」と否定した。

「構わねえよ」


くっくっくっ、と俺たちのやり取りを聞いていた伝九郎が物凄く嬉しそうに笑った。


「あんたは、そっちの男からおつるぎ様の居場所を何としても吐かせろ」


隼人は押し殺した声で俺にそう言って、前に出た。

蜃蛟の伝九郎と向き合う。


「円士郎様」と、俺には背中を向けたまま、秋山隼人は言った。


「もしも俺が死んだら、相模家の加那という女に、『すまぬ』と伝えてくれ」


俺はその背中を見つめた。

彼が何を抱えていて、どのような思いで今こうして蜃蛟の伝九郎と対峙しているのか、俺にはわからなかったが、並々ならぬ覚悟が鮮烈に伝わってきた。


「ああ。承知した」


と、俺は頷いた。


「死んだら仇を討ってくれ、とは頼まなくて良いのか?」

揶揄するように伝九郎が嘲笑って言った。

「ああ、必要ない」

隼人は研ぎ澄まされた刃のような声でそう応じて、

「例え死んでも、貴様はこの俺がその前に必ず斬って死ぬ」

と言った。


ふははは! と伝九郎が楽しくて堪らないという様子で哄笑を上げた。
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