恋口の切りかた
【剣】
「おいって! 留玖、どういうことだよ!?」
円士郎が怖い顔で訊いてきて、
霧夜は私のことを助けてくれて、それで今度は私が霧夜を手助けすることになったということを説明しようとしたのだけれど、
せっかく山道を歩いて、
城下に戻ってきて、
円士郎に会えたのに、
どうして私たちはこんな風に刀なんか合わせてるんだろうと思って──
私は悲しくなって、刀を下ろして、黙ってうつむいてしまった。
「おい! る……」
「どういうことだ!? 何故、その娘とてめえがここにいる!?」
なおも私に向かって問いただそうとする円士郎の言葉を遮って、大声がした。
私たちがここに来た時から部屋の隅に立っていた白輝血の兵五郎が、目を見開いて私と霧夜を凝視していた。
「霧夜──てめえ、裏切りやがったのか──」
「は! 裏切った!? 笑わせるね、カガチの貸元」
霧夜が凄みのある目つきで兵五郎を睨んだ。
「俺は初めッから、てめえなんぞの下についた覚えなんてねえよ」
「何だと!?」
「俺は鵺の手足の虎だぜェ?
先代の白輝血の貸元だった清次が死んでてめえの代になってから、どうもカガチが気になる動きをしてやがったんで、鵺を裏切ったフリで探りを入れてただけのことよ」
そう言えば──
私は、前に虎鶫の銀治郎親分が、ちょうど兵五郎の代になってから霧夜がカガチに出入りするようになったと言っていたのを思い出した。
銀治郎は霧夜が兵五郎を唆してカガチが妙な動きをするようになったのだと語ったが、
実際はあべこべで、カガチがおかしな動きをするようになったから霧夜が潜り込んだということだったのか。
「まあ、本当は俺も、焼死に見せかけて人間を焼き殺す方法を探り出すまでは大人しくしてるつもりだったんだがなァ」
「てめえ、騙しやがったのか!」
怒りで顔を赤く染め、兵五郎が唾を飛ばしてわめいた。
「殺せ!」
その途端、周囲の襖が音を立てて開いた。
幾つもの蝋燭や行灯の光が座敷に差し込んで、
ずっとそこらに潜んでいたのか、兵五郎の手下と思われる連中が匕首や刀を構えて一斉に部屋の中に雪崩れ込んできた。