恋口の切りかた
遊水は、やはり土足で藍色の庭から座敷へと上がってきて、与一へと歩み寄りながら、

「虎は鵺の手下でやすから、どこかで入れ替わったんでしょう。
ここへ来る途中、外で擦れ違いやしたぜ?」

と言った。


え? と俺と留玖が顔を見合わせて、


「じゃあ、これが本当に鵺の二代目──」


渡世人たちが呟いて、慌ててその場で膝を折った。


「な……何やってる!?」

自分の手下までもが膝を突くのを見て、兵五郎が慌てた。

その前で、与一は燃え立つような赤い化け物の彫られた背をさらしたまま、
ダン、と大きく音を立てて兵五郎へと一歩足を進め、芝居がかった仕草で踏み出した膝の上に腕を乗せた。

「よォ、兵五郎。『虎』から話は全部聞いたぜ。
尾が本体を裏切ってこの行動!

指詰めたくらいじゃァ済まされねェな。どうオトシマエつける気だい!?」

堂々たる風格を漂わせた侠客の言葉だった。

覇気の漲る鋭い隻眼で睨み据えられて、

「黙りやがれ!」

兵五郎が怯むことなくそれを睨み返して声を張り上げた。

「俺は鵺の手下の白輝血なんざもう、まっぴらなんだ!」

兵五郎が袖から腕を抜き、与一と同じように上半身をさらして背を見せた。

白い蛇の入れ墨の上から、ホオズキ──赤輝血の入れ墨が彫られた背中だった。

「俺ァ『赤輝血』だ! 今ここでてめえのタマ取って俺がここらのシマをいただく!」

言うなり、懐の匕首を引き抜き、兵五郎が与一に躍りかかる。
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