恋口の切りかた
逃げやがった!
俺は慌てて、明るくなりつつある庭のほうを見回して──
ふと、
室内に目を戻し、役人の出現に戸惑っている渡世人たちの中で、顔色一つ変えずにいる二人の人間に気がついた。
「役人使って一家を壊滅させようたァ、怖いお人だぜ」
と、遊水がニヤニヤしながら与一に言い、
「俺は、銀治郎一家までここに寄越すように依頼した覚えはねェけどな」
いつの間にか着物を着て背の入れ墨を隠した与一が、涼しい顔で肩をすくめた。
俺は唖然となる。
銀治郎たちも役人連中も、この場に現れたのは操り屋が仕向けたことらしかった。
「そっちこそ、契約違反だぜさっきのは」
遊水はにやついていた顔をしかめて、緑色の目玉で与一を睨んだ。
「こんな大勢の前で正体見せるなんざ、狂気の沙汰だ。ごまかすこっちの身にもなりやがれ」
──んん?
与一は、悪い悪い、とちっとも悪びれた様子なく笑って、
「さすが操り屋。うまく、虎とは別人だって思いこませてくれたじゃないか」
そんなことを言った。
俺は、成る程と納得する。
先刻遊水が、「その男は霧夜ではない」という内容を口にしたのは、やはり鵺の正体を隠すための方便だったようだ。
契約違反、などという単語が口に上ったところから察するに、与一が遊水に何らかの依頼をしていたというところだろうか。
この食えない二人、どうやら以前から繋がっていたようだ。
俺は慌てて、明るくなりつつある庭のほうを見回して──
ふと、
室内に目を戻し、役人の出現に戸惑っている渡世人たちの中で、顔色一つ変えずにいる二人の人間に気がついた。
「役人使って一家を壊滅させようたァ、怖いお人だぜ」
と、遊水がニヤニヤしながら与一に言い、
「俺は、銀治郎一家までここに寄越すように依頼した覚えはねェけどな」
いつの間にか着物を着て背の入れ墨を隠した与一が、涼しい顔で肩をすくめた。
俺は唖然となる。
銀治郎たちも役人連中も、この場に現れたのは操り屋が仕向けたことらしかった。
「そっちこそ、契約違反だぜさっきのは」
遊水はにやついていた顔をしかめて、緑色の目玉で与一を睨んだ。
「こんな大勢の前で正体見せるなんざ、狂気の沙汰だ。ごまかすこっちの身にもなりやがれ」
──んん?
与一は、悪い悪い、とちっとも悪びれた様子なく笑って、
「さすが操り屋。うまく、虎とは別人だって思いこませてくれたじゃないか」
そんなことを言った。
俺は、成る程と納得する。
先刻遊水が、「その男は霧夜ではない」という内容を口にしたのは、やはり鵺の正体を隠すための方便だったようだ。
契約違反、などという単語が口に上ったところから察するに、与一が遊水に何らかの依頼をしていたというところだろうか。
この食えない二人、どうやら以前から繋がっていたようだ。