恋口の切りかた
殿様公認の芝居小屋で、まさか元盗賊の渡世人が座元をしていたとは。

もっとも、この事実を知るのは本人と与一、蚕糸の三人のみで、他の役者や今の二代目座元たちは全員まっとうな座員。
鈴乃森座自体はちゃんとした芝居小屋らしいが。

初めは先代の鵺と与一と二人で鵺を演じていたということは、複数の人間ではないかという俺の推理も本当に惜しくはあったワケだ。


ん?

「ちょっと待てよ! つまりこの話だと、鈴乃森座はてめえら鵺の住処だったワケだろ?」

そうすると疑問が出てくる。

「それで──どうして、鈴乃森座に行った留玖が白輝血に拉致されるんだ?
白輝血はてめえとらとは敵対関係だったワケだろうが」

俺の言葉を聞いて、留玖も与一を見上げた。

「そうだよ。蚕糸に薬を飲まされて意識がなくなる直前、私も兵五郎たちがやってきたのを確かに見たよ」

ふふ、それよ、と与一は渡世人らしい笑い方をした。

「順番に説明するとな、事の起こりは三年前、白輝血の清次が死んで、兵五郎がその後を継いだことだ。

奴は若ェし、野心家だった。
ここらのシマを全部自分のモノにしようと企んでやがったんだ」

それは以前、俺と留玖が虎鶫の銀治郎に聞かされた話とも一致する。

「それをどこで嗅ぎつけたのかは知らねェが──おそらく、一味を抜けた鵺のシマってことで、常に監視してやがったんだろうな──そこに『闇鴉』が接触してきやがった」

「それって……」

俺は、闇鴉の一味だという、腕に八咫烏の入れ墨を持つ白輝血の用心棒を思い浮かべた。


「蜃蛟の伝九郎さ。奴が白輝血に雇われてたのは、単なる用心棒としてじゃねえのよ。

奴ァ、闇鴉と白輝血との『繋ぎ役』だ。

闇鴉は兵五郎にな、兵五郎がここらのシマを手中にした暁には、一味がこの城下に入り込む手助けをするという条件付きで、白輝血が虎鶫をつぶす力を貸してやろうと取引を持ちかけて来やがったンだ」


「この城下に盗賊が入り込む手助けだと──!?」


予想外の深刻な話に、背筋に緊張が走るのを感じた。
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