恋口の切りかた
「その頃まだ生きてた先代の鵺は探りを入れるため、すぐに俺を白輝血に送り込んだ。
鵺を裏切ったことにしてね。

そうしたら兵五郎の野郎、俺に鵺の正体をしつこく訊いてきやがってな。
まァ俺は『汚れ仕事を任されてたから、いつでも切れるように鵺は俺には正体を明かさなかった。それが気に入らなくて裏切った』ってことにしておいたが──

それで、兵五郎が鵺の大親分って存在も消しちまいてェと考えてることがすぐにわかったってワケさ。

もっとも、義理も道理もねえ兵五郎とは違って、闇鴉の連中のほうは、もともと仲間だった先代の鵺まで消すことには反対だったみてェだがな」


そして去年の終わりに先代の鵺が死んだ途端、兵五郎たちは行動を起こしたということらしい。


「俺が鵺の正体を知らねえと言ったモンだから、次に兵五郎が目を付けたのが──白蚕糸ってェことよ。

闇鴉の連中にさえも、正体不明の先代の鵺や俺の面は割れてなかったが──
白蚕糸のことはさすがに裏の世界じゃァ知れ渡ってる。

兵五郎は蜃蛟の伝九郎から、白蚕糸が一緒に一味を抜けて俺と先代の鵺の世話をしてた鵺の腹心だってことを聞き出して、白蚕糸も仲間に引き込もうと、鈴乃森座を頻繁に訪れるようになった。

蚕糸はそんな話にホイホイ乗るような奴じゃァねえけどな」


白輝血の連中が、蜃蛟の伝九郎と共に芝居小屋を訪れていたのはこのためか。


って、ちょっと待て。


「白蚕糸のことは裏の世界じゃァ知れ渡ってる、だとォ!?」


俺は金髪の操り屋を睨んだ。
自分でも頬が引きつっている気がする。

「遊水、あんた初めッから白蚕糸の正体知ってやがったな!?」

白蚕糸について尋ねた俺に、しゃあしゃあと「わからない」と答えた操り屋は、油断ならないニヤニヤ笑いを浮かべた。

「悪いねえ、円士郎様。円士郎様よりも鵺のほうが、俺にとっては先客でね」

つまり──

「この城下で白蚕糸や鵺の正体を隠すこと、それが、操り屋のことを知ってすぐに俺が依頼した仕事さ」

与一が切れ長の左目で遊水を見てそう言った。
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