恋口の切りかた
遊水は憮然とした俺を眺めてクックと肩を揺らした。
「だから、白蚕糸に会いに鈴乃森座に行ったおつるぎ様が白輝血にさらわれたって聞いた時には、俺もどういうことかと驚いたんだ」
屋敷に現れた時、遊水が去り際に口にした疑問はまさに、与一の話を聞いて初めて俺と留玖が抱いた先刻の疑問と同じだったわけである。
「驚いたのは俺も同じよ」と、与一が散切り頭を掻いて言った。
「俺もまさか、蚕糸がおつるぎ様を人質にとって兵五郎に差し出すとは思ってねえから、何の真似かと思ったぜ」
「なに?」
「蚕糸の意図がわかったのは俺もついさっきだ」
俺は与一の言葉に眉を寄せる。
どういうことだろう。
蚕糸の行動は、鵺である与一があずかり知らぬ事だとでも言うのか。
美貌の侠客は苦笑いして、
「そもそも蚕糸は先代の腹心であって、俺の腹心じゃあねえのよ。
俺が鵺の二代目を継いでも、奴にはなかなか認めてもらえなくてね。
俺自身も、二代目としてここらを仕切るならば、先代が死んだ途端に小競り合いを始めた連中の本質を見極めてからにしようとした。
これを踏まえて今回の拐かしのことに話を戻すとな、
結果として──どうなったか。
俺が蚕糸の行動を理解したのはそれを考えたからだ」
留玖たちがさらわれた結果──どうなったか、だと?
「蚕糸がどういうつもりでおつるぎ様を白輝血に差し出したのかはわからなかったが、それを迷いなくあんたらへの脅迫に使った白輝血の連中に、俺は鵺の二代目として愛想を尽かし、このコを連中から奪い返してここに来た」
その結果──
俺の脳裏を先刻のやりとりがよぎる。
虎鶫の連中に「てめえらの侠気、しかと見たぜ」と語って正体を明かし、
白輝血の兵五郎にはオトシマエをつけろと迫った与一と、
兵五郎から与一を守った蚕糸。
「与一、てめえにとっては虎鶫は合格、白輝血は不合格、
白蚕糸にとってはてめえは合格ってことが確定した、
──とそういうことか?」
試されたのさ、と与一は兵五郎に言った。
「つまり──蚕糸に試されたと?」
さすが、円士郎様は頭の回転が速いなと、与一は感心したように言って頷いた。
「だから、白蚕糸に会いに鈴乃森座に行ったおつるぎ様が白輝血にさらわれたって聞いた時には、俺もどういうことかと驚いたんだ」
屋敷に現れた時、遊水が去り際に口にした疑問はまさに、与一の話を聞いて初めて俺と留玖が抱いた先刻の疑問と同じだったわけである。
「驚いたのは俺も同じよ」と、与一が散切り頭を掻いて言った。
「俺もまさか、蚕糸がおつるぎ様を人質にとって兵五郎に差し出すとは思ってねえから、何の真似かと思ったぜ」
「なに?」
「蚕糸の意図がわかったのは俺もついさっきだ」
俺は与一の言葉に眉を寄せる。
どういうことだろう。
蚕糸の行動は、鵺である与一があずかり知らぬ事だとでも言うのか。
美貌の侠客は苦笑いして、
「そもそも蚕糸は先代の腹心であって、俺の腹心じゃあねえのよ。
俺が鵺の二代目を継いでも、奴にはなかなか認めてもらえなくてね。
俺自身も、二代目としてここらを仕切るならば、先代が死んだ途端に小競り合いを始めた連中の本質を見極めてからにしようとした。
これを踏まえて今回の拐かしのことに話を戻すとな、
結果として──どうなったか。
俺が蚕糸の行動を理解したのはそれを考えたからだ」
留玖たちがさらわれた結果──どうなったか、だと?
「蚕糸がどういうつもりでおつるぎ様を白輝血に差し出したのかはわからなかったが、それを迷いなくあんたらへの脅迫に使った白輝血の連中に、俺は鵺の二代目として愛想を尽かし、このコを連中から奪い返してここに来た」
その結果──
俺の脳裏を先刻のやりとりがよぎる。
虎鶫の連中に「てめえらの侠気、しかと見たぜ」と語って正体を明かし、
白輝血の兵五郎にはオトシマエをつけろと迫った与一と、
兵五郎から与一を守った蚕糸。
「与一、てめえにとっては虎鶫は合格、白輝血は不合格、
白蚕糸にとってはてめえは合格ってことが確定した、
──とそういうことか?」
試されたのさ、と与一は兵五郎に言った。
「つまり──蚕糸に試されたと?」
さすが、円士郎様は頭の回転が速いなと、与一は感心したように言って頷いた。