恋口の切りかた
「白輝血の連中の中には、カタギの人間を巻き込むことに反対する者が誰一人いなかった」

与一は瞑目し、深い溜息を吐いた。

あの廃寺で狒狒の尼僧に化けた彼が、俺との同盟を拒否し、俺たちに手を引けと言ったことを思い出す。
無関係の者を巻き込むことを嫌うのは、この二代目鵺の一貫した揺るがない道理のようだった。

「だからカガチを完全に潰すと決めた俺は、昼間のうちに操り屋に、俺の動きに合わせて役人を送り込めと依頼しておいたのさ」

「ま、こっちも詳しい事情は何一つ知らされてなかったから、まさかおつるぎ様が拐かされたとは思ってなかったぜ」

与一が金髪緑眼の操り屋を見て、遊水が白い顔に苦笑を浮かべた。

「しかし俺は、虎鶫まで寄越すようにとは頼んでねえぜ?」

未だ役人と渡世人の捕り物騒動が続くその場を見渡して、与一がやや訝しげな様子になる。

食えない操り屋はにやっとして、

「虎鶫の連中に対しては、俺はただおつるぎ様の拐かしの情報を流しただけだぜ。あとは連中が勝手に殴り込みをかけたんだ。
しかしこれで、虎鶫の侠気も見えて、あんたは名実共に二代目だ。良かったな」

とぼけた口調でそう語った。


もちろん──

虎鶫の銀治郎たちに情報を流した時点で、この人心を読むことに長けた男には連中がどう動くかわかっていたのだろう。
実際に脅迫文を受け取った俺たちが乗り込めば留玖たちに危害が加えられる恐れがあるが、銀治郎たちはまた別だ。

俺が動かなかった場合の保険と、そして──


「虎鶫の一家を試して、俺が連中を見極めるのを手助けしたってことかい」

与一が鼻を鳴らした。
< 1,195 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop