恋口の切りかた
【剣】
与一が正体不明の鵺の二代目で、あの目玉が落ちる尼僧や霧夜に化けていたという話だけでも頭の中がこんがらかりそうだったのに、
渡世人たちの裏事情を聞いて、私は話について行くのに必死だった。
ええと、ええと、
与一はもともと盗賊で、父親や蚕糸と一緒に盗賊を抜けて、鈴乃森座を作って、女形になって……
兵吾郎たち白輝血は、虎鶫の銀治郎たちと鵺の両方をつぶしてこのあたりの縄張りを手に入れるために、盗賊と手を組んでいて……
その盗賊との繋ぎ役として、蜃蛟の伝九郎は表向きは用心棒として兵吾郎たちに雇われていて……
与一は先代の鵺の命令で、霧夜として白輝血のもとに潜入していて、でもその間に先代の鵺は死んで、兵吾郎たちは虎鶫と鵺をつぶすための行動を起こして……
白輝血が鈴乃森座を頻繁に訪れていたのは、伝九郎から蚕糸の正体を聞いて、二代目が誰なのかを知っている鵺の腹心の蚕糸を自分たちの仲間に引き込むためで……
私たちが断片的に垣間見ていたこの事件の背景は、こういうことらしかった。
そんな中、私と志津摩が事件を調べに行って、
そうしたら──
蚕糸に利用された。
私たちを手みやげに白輝血に寝返るフリをして、蚕糸は白輝血と与一がどう動くか双方を試した──と、そういうことのようだ。
つまり、
霧夜に化けていた与一が白輝血のもとに潜り込んでいて、意識のない私を伝九郎たちから守ってくれたのは本当に運が良くて、下手をしたら私は今頃ひどい目に遭わされていたのだ。
そうわかって、ぞっとする。
同時に、
普段から見知った仲だったからということなのか──助けてくれた与一にはやっぱり感謝した。
昼間に鈴乃森座を訪れた時、渋い顔をして私に関わるなと言っていた与一を思い出していたら、
「気に入らねーな」と不機嫌な低い声で言って、円士郎が与一に刀の切っ先を向けたので、私はびっくりした。