恋口の切りかた
お縄にした渡世人たちを引っ張って行く神崎帯刀たちに視線を送りながら、「おい」と円士郎が遊水に小さく囁くのが聞こえた。

「いくら操り屋として依頼を受けたからってなァ……あんた、役方の奴らをここによこすなんて、どういうつもりだ?
渡世人に武家の娘がさらわれたなんて、こんな話が広まったら……」

「渡世人風情が武家に喧嘩を売ればどうなるか、ようく思い知らせる必要があるだろうが」

遊水は実に冷ややかな声音で、円士郎を遮ってそう返した。

金の髪の若者は、私が初めて目にするような冷酷な感じでククク……と低く喉を震わせて、

「これで骨身に染みたと思うぜ? カガチはもちろん、この場に居合わせた虎鶫もな」

冷笑と共にそんなことを言った。


『この場に居合わせた』って……

虎鶫の銀治郎たちをここに来るように仕向けたのも、さっきの話だと遊水だ。


この人、渡世人たちに対してはそのつもりで──


「いい見せしめになっただろう?」


これが、昔盗賊だったという緋鮒の仙太の性格……ということなのかな。

遊水は私の背筋が冷たくなるような、残忍な口調で円士郎にそう言って、


「もっとも、確かに役人が踏み込んできたわけだから、こいつは事が大きくなるねェ。
武芸の家と言いながら、娘を渡世人にさらわれるなんざ、結城家の名に傷がつくな」

いたぶるように続けた。

「江戸のお父上、晴蔵様のお耳に入ったら……さて、こりゃァどう思われるかな」

ククッと笑いを漏らす遊水に、円士郎が顔色を変えた。

「てめえ……!」
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