恋口の切りかた
「まァ、俺ならこれも揉み消すことができるが──どうする? エンシロウサマ」


意地の悪いニヤニヤ笑いを浮かべた遊水を、円士郎は穴が開くほど眺めて──


大きくため息を吐いた。


「クソ、つまりこれで貸し借り無しにしようってことかよ」

「さすが、円士郎様は話がわかるじゃねェかい」


おかしそうに遊水が言って、円士郎が苦虫を噛みつぶした顔になった。


「ったく……ここまで計算して虎鶫と役方の連中をここによこしたとはな。俺も考えつかなかった」

円士郎は白い顔で笑む男を恨めしげに見て、投げやりにそうぼやいた。

「いったい何手先まで読んで人を動かしてやがるんだ、あんたはよ。
貸しを作っておこうとか考えた俺が馬鹿だったぜ」


円士郎は遊水に対して何か貸しがあったのだろうか。

『貸し借り』という二人のやりとりの意味はよくわからなかったけれど、



先走った浅はかな行動のせいで危険な状態に陥って、

円士郎に心配をかけて、

しかも結城家の名に傷をつけるような真似をした──



私は改めて、自分の勝手な行動が自分の身一つでは済まないとんでもない事態を招いたのだと知って、体が震えた。



「俺の今の言葉、聞こえてやしたかね?」

両手を握りしめたままうつむいていたら肩に手が置かれて、遊水が私のすぐそばに立っていた。
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