恋口の切りかた
「おつるぎ様がさらわれるのはね、単なる町娘がさらわれたってのとは意味合いが違ってくる。事が大きくなると、今俺が言ったようなことになるんです」

こちらの胸中を見透かしたように、遊水は私の耳元でそっと口にした。

円士郎とのやりとりも、私に聞かせるため、わざと聞こえるように会話していたのかもしれなかった。

「今回のこと、何かご自分に非があったとお考えなら、次に生かしなせえ」

見上げると、
遊水は先刻円士郎と話していた時の冷笑とは全然違う、優しい笑顔を私に向けていた。

「ご無事で良かった」

そう残して、操り屋は静かに私から離れた。

優しい言葉には思わず涙がこぼれそうになったけれど、私は握った両手に力を込めて堪えた。


同時に、

過去に盗賊だったとしても、やっぱり遊水は悪人ではないと思った。


以前、道場破りに対して力を貸してほしいと言った私を断ったり、
今も私を戒めてくれたり、

遊水の言動は道理に適っていて、
ただ優しいだけではなく、私のことを正しい方向に導いてくれているような気がした。



私たちが話し込んでいる間に、渡世人があらかたお縄になった座敷の中はがらんとして、

「おい、当の貸元はどこに行った!?」

静かになった室内を見回して神崎帯刀が怒鳴った。

「やべェ、忘れてた」

円士郎がハッとした顔になる。
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