恋口の切りかた
こんな状態でも私の身を案じてくれた隼人に、胸に熱いものがこみ上げて、
私も隼人に駆け寄り、円士郎の後ろから彼を覗き込んだ。

「留玖ならこのとおり無事だ。酷い目にも遭わされてねえよ」

隼人が目を動かして、私を見て


ようやく、安堵の笑みを浮かべた。


「……そりゃ……良かった……もうケンカなんか、すんなよ……」


円士郎と私を見比べながらそんな言葉を口にして、隼人は目を閉じた。

私と円士郎は思わず顔を見合わせて──なんだか気まずくて、すぐに目をそらしてしまった。

「留玖、あのよ……」

円士郎がもごもごと口を開いて、

「……なあに?」

私は続きの言葉を待ったのだけれど──


「このお侍、本当にやっちまったのか……馬鹿だねェ」


伝九郎の死体を見下ろして与一が放った言葉で、
円士郎も私もハッと与一を見上げて、会話は途切れてしまった。


与一は端正な顔を歪ませて、円士郎が抱き起こしている隼人をちらっと見た。


「せっかくあの寺で忠告してやったってのに──これでその男、闇鴉の一味から狙われる身だよ」


薄ら寒いその響きは、部屋の温度を少しだけ下げた気がした。
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