恋口の切りかた
朝日を浴びながら長屋に着いてみると、まるで私たちがここに来ることがわかっていたかのように
兵五郎の店から体よく行方をくらませていた遊水と与一が待ち構えていた。

役人の目をごまかすためなのだろうか。
渡世人たちを束ねる二代目の鵺は、先刻までの散切り頭の黒い着物姿ではなく
いつも鈴乃森座で私たちが目にしている役者の鈴乃森与一の顔に髪型で、格好も普段着の着流しだった。

見事な早変わりだ。

ただし、義眼を失った片目にだけは布を巻いて隠していた。


自分の家の前に立った金髪の操り屋を見て物凄く嫌そうな顔になる鬼之介に、円士郎が与一についてもざっと説明をして、


鬼之介はますます嫌そうな顔になった。


役人の様子を探ってきたという遊水の話によれば、役人が血眼になって街道のほうを探しているが逃げた兵五郎の姿はなく、どうやらまだ城下にとどまっていそうだ、とのことだった。


そんな話をしていたら、「探したぞ、ここだったか」と言って宗助も現れて、

それこそ後をつけていたという兵五郎の行方なのか、何やら円士郎に耳打ちをして──


「やっぱりな」


その報告を聞いた円士郎がニヤッとした。
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