恋口の切りかた
「ど……どうして、『それ』がまたあるの?」

留玖がその視線の先を凝視したまま、青ざめた顔になって俺の袖をぎゅっとつかんだ。



明るい真昼の日中、貸元の背後の道の脇にぽつねんと立っているのは見覚えのある屋台である。

大きく書かれた、そば屋という文字が記憶にこびりついている。

そして、当然のごとくに──その屋台には狐の顔をした店主の姿があった。


「狐の屋台かよ」と、与一が切れ長の目を細めた。


「に、人形でしょう! そんなの、もう怖くないもん」

内容とは裏話に、留玖が裏返った声で叫んで──


狐の店主は無言のまま、彼女の言葉を嘲笑うかのようにほてほてと歩いて、屋台の周りを一周して元の位置に戻った。


「ひっ!? な……なんで……? ふええ……」

「よく見ろよ留玖。ありゃ、お面を被った人間だ」

相変わらず怯えまくってかわいい声で半ベソをかく留玖に、俺は苦笑しながら教えてやった。

「人間……?」

留玖が目を見開いた。
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