恋口の切りかた
「エン……」


私は震えている彼の背中に手を伸ばして、抱き締めて


大好きだよ、エン──


許されない思いを心の中で呟いた。


呟いた途端、

小さい頃に村で母親に言われた言葉が浮かんで
じわっと胸に痛みが広がった。



大きくなったら、一番好きな人のところにお嫁に行きなさい。

それが幸せなことなのだから。



だったら私は、きっと──

幸せにはなれないんだろうな。



認めてしまえば、つらくなるだけだとわかっていた。


それでも、
やっぱり円士郎のことが大好きだった──。
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