恋口の切りかた
与一の義眼を作ったのが、人形斎だった──!?


私は驚いて、地面に押さえつけられているお面の男を見下ろした。


「その目玉、人形斎が作ったものか」

円士郎も目を丸くして、与一の手で冷たく光る壊れた義眼を見つめた。

「そうさ」と、城下一の人気を誇る女形でもある侠客は力無く頷いた。

「この目はな、若かった俺が盗賊時代にヘマをして失ったモンだ」

与一は右目を隠していた布を軽く持ち上げて、下に隠れていた何もない眼窩を見せた。

「義眼を入れれば、日常生活を送る分には問題ねえさ。
だが、舞台に立つとなれば話は別だ。

動かない義眼じゃあ、芝居の見栄だって切ることができねえ」

人形斎さんはな、と再び布で右目を隠して与一は手に握った義眼を見つめた。

「目の周囲の筋肉の刺激によって動かすことのできる精巧な義眼を作ってくれた。
今日の鈴乃森与一があるのは、このおかげさ」

以前、芝居小屋を訪れた時に与一が言っていた言葉の意味がようやくわかった。

そう言えば鬼之介も、人形斎という人物は元々、カラクリ人形を専門に作っていたと言っていた。

その技術を用いて、彼の目玉を作ったということなのだろう。

「あんたはこの俺に、もう一つの日の当たる人生をくれたんだ。
それが──どうしてこんな人殺しの道具なんか──」

その美貌を苦悩に歪める与一に向かって、円士郎が口を開いた。

「与一、そいつはあんたの義眼を作った男じゃないぜ」
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