恋口の切りかた
「なんだと──!?」

どういうことかと与一が怪訝な顔になる。

「そいつは人形斎の名を騙(かた)った偽物だ」

「馬鹿な……」

「本物の人形斎はな、ここを遠く離れた長崎の地で、二年も前に死んでたよ。
俺の忍に調べさせたから間違いねえ」

「何を言ってる!? そんなワケはねえ!」

円士郎の言葉を聞いた与一は食ってかかった。

「俺は、昔から鈴乃森座に出入りのあった人形斎さんのカラクリをよく見て知ってる」

与一は志津摩が押さえている男を指さして、

「この人が作ってたカラクリは、人形斎さんが作ってたカラクリと何から何まで同じだった!
名を騙ることはできても、その腕や技術まで騙ることはできねえ!」

「ああ、だからそれができる人間なんだろうさ」

「……なに?」

円士郎は、狐面の脇に屈み込んだ。

「人形斎には、おそらく城下にいた頃の昔から、仕事を手伝っていた弟子でもいたんじゃねーのか?
弟子なら、師匠の人形斎とうり二つのカラクリを作ることだってできるだろ?
それがお前だ。どうだ、違うか? ニセ人形斎よォ」

けたけたけた、と狐面が笑い声を上げて、志津摩がぎょっとしたような顔になった。

「ケケケ……ウツケモノだと、きいてイタが、なかなキレモノ、じゃないカエ、ユウキのおボっちゃマ」

「そいつはドーモ」

冷ややかに狐面を見下ろしたままそう言う円士郎に、

人形斎と名乗り、
鳥英に人間の体の中身の絵を依頼し、
鈴乃森座に出入りし、
城下を混乱と恐怖に陥れたその狐のお面の男は、


「そうだヨ。アナタサマの、スイリであって、おりマスル。
ワシは、カつテ、ニンギョウサイの、カタウデだっタ、モノだヨ」


と、その正体を語った。
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