恋口の切りかた
「そうか」

遊水が、無表情に狐面を見下ろした。


「五年前の事件が、てめえら師弟を狂わせたんだな──」


俺はそう呟く金髪の男を見つめて、



突然、

狐面の男が暴れて、志津摩に押さえつけられていた片腕を動かし

懐から水筒のようなものを取り出し、中身を自らの頭にかけた。


──この臭い!


「志津摩、離れろ!」


俺は自分も後ろに跳び下がりながら、同心見習いの若者に怒鳴った。


困惑した表情を浮かべて、志津摩がためらうように俺と狐面を交互に見た。


「命令だ! そいつから離れろッ」


俺の叫びでようやく、狐面から手を離して志津摩が退いた。


頭から全身に、竹の筒に入った液体をかけながら、

狐面がゆらりと立ち上がる。



その手が顔に伸びて、

これまでずっと素顔を隠し続けていた白い陶器のお面を



外した。
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