恋口の切りかた

 【剣】

円士郎が私の体をそっと離した。

見ると、狐の顔をした男が立っていた場所にもムシロがかけられていて、

「この人は……」

恐る恐る呟いた私に、

「死んだ」

円士郎が強ばった表情でそう告げた。


それから円士郎は、同じような表情で硬直したように突っ立っている日向志津摩に視線を送った。

「礼を言うぜ、志津摩」

円士郎は、小型の天照を打ち壊し、カラクリ発明家を取り押さえて私たちを救った若い同心見習いに笑顔を見せた。

「お前のおかげで、留玖は助かった」


びくっと、志津摩の肩が震えて


「あ……お、俺は……俺はッ──」

志津摩の目から涙が溢れ、彼はその場に膝を突いて泣き崩れた。


「こいつは──まさか──!?」

戦慄した声が響いて見ると、

鬼之介が、残されたお椀型の巨大な鏡を調べて、わなわなと身を震わせていた。


唐突に、彼はその輝きを近くに積まれた材木へと向けて──


──何も起きなかった。
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