恋口の切りかた
だから、風佳は何も知らないはずだ。


なのに……

何だってこんなど真ん中を突いた質問が飛び出してくるんだ!?


俺は何とか平静を装って、風佳の質問の真意を探り出そうとした。

「どうって……留玖は俺の義妹だが……どういう意味だ?」

「おつるぎ様のことを、一人の女性としてはどう見てらっしゃるか、という意味です」

げほごほ。

……ダメだ。平静なんか装えねえ。

天守閣を撃ち抜く質問に、俺は再び盛大にむせ返った。


これはどう考えても──完璧に風佳に気づかれている、ということじゃねーかよ。


って──


いつからだ?


俺は薄ら寒い気分になりながら考えた。


もしも風佳が俺の思いに気づいていたのだとすれば──あの自害騒動は、やはり俺のせいということになるのではないかと思ったのだ。


「なあ、風佳」

俺は茶を一気に飲み干して、なんとか心を落ち着けて、縁台の隣にちょこんと座っている許嫁殿を見下ろした。

「ひょっとして……俺のせいか?」

「はい?」

「前にお前が、俺との婚儀が嫌で自害しようとしたのって……」

「え……?」

あれ? 違うのか?

不思議そうに首を傾げた風佳を見て、俺は再びわからなくなったが……


「悪ィな、風佳。俺なんかの許嫁にされて──」


考えてみると風佳もかわいそうだ。

彼女もまた──武家の習わしに縛られて逃れられずにいる。

そう思って、俺はこの年下の許嫁殿の頭を撫でた。
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