恋口の切りかた
「親父殿と大河殿とに交友があるからってよ、結城家との縁組み話なんて、大河家からはどうやったって断れねえだろ。
お前も、家のためにってつらい思いしてるよな」


亜鳥と青文との婚儀を思い出して、彼女の頭を撫でながら俺がそう口にすると、風佳は驚いたように目を見張って──

頬を赤らめた。


「い……いえ。こちらこそ、円士郎様の面目を潰すご無礼な真似を致しました」


風佳はそう言って、そわそわした様子で俺を見上げて、


「少し、おつるぎ様の気持ちがわかりました。円士郎様は……本当はお優しいお心をお持ちなのですね……」


そんなことを言った。


留玖の気持ち──?


俺はよくわからない言葉に首を捻って、


それにしても落ち着かない様子の風佳の態度は何なのだろうかと思う。

俺と二人きりなんてことはこれまでほとんどなかったから、慣れない男相手に緊張してるのか?



のんきにそんなことを考えて、

運ばれてきた新しい茶に手を伸ばして──



この時、風佳が何の目的で俺を屋敷から誘い出したのか、

彼女の本当の目論見など想像すらできなかった。
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