恋口の切りかた
「ふうむ。しかしアレだな」

亜鳥が俺たちを見比べて楽しそうに言った。

「色男が三人も揃うと、さすがに壮観というところだな」

三人、ねえ。

自分の旦那もしっかり含めてやがるのな。


青文が吹き出して、
与一が「おっと、このお人たちと並べられちゃあ、本業の役者も形無しかい」などとおどけた。

茶を飲み終えて、湯飲みを縁台の上に置き、
苛酷な関係を乗り越えて幸せそうに笑い合う亜鳥と青文を眺めながら、俺もにやついて──


「風佳殿もそう思うだろう?」

と、亜鳥が風佳を見た。


「え? ええ、はい……」

風佳は、俺が飲み干した空の湯飲みに視線を落としたまま、早口で答えた。


「どうかされたのかね? 随分と顔色がよろしくないようだが……」

真っ青な風佳の顔を覗き込んで、亜鳥が心配そうに尋ねた。


青文が眉間に皺を作った。


「え? あ、ああ……その、確かにわたくし、少々気分が優れません」


風佳はあたふたと立ち上がって、


「え、円士郎様、お友達も参られたようですし、わたくしはこれで失礼いたします」


そそくさと立ち去ろうとする許嫁殿を見て、俺はびっくりした。


「待てよ。大河家に戻るなら、送っていくぜ」

「いえ。一人で問題ありません」

「いや、昼日中にお前を一人で歩かせるわけにもいくかよ」


俺と風佳を見比べて、亜鳥と与一が怪訝そうな表情を浮かべて

俺は腰を浮かせかけ──
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