恋口の切りかた
屋敷に戻って、彼女の部屋を覗いて──

部屋が空なのを見て、仕方なく自室に向かったら、
俺の部屋の前の廊下に座ってぽーっと庭を眺めている留玖を見つけた。

「留玖」

俺が声をかけると、留玖はパッと顔を上げてきらきらした目を向けた。

小走りに俺の方へと駆け寄って、留玖は少しだけ頬を赤く染めて俺を見上げた。

「エン、おかえりなさい」

……か……カワイイぞ……!

ひょっとして、ここでずっと俺の帰りを待っていてくれたのか?

思わず言葉をなくして立ち尽くす俺に向かって微笑んで、留玖は銀色のかんざしをつけた頭を見せて、

「あのね、これ、ちゃんと使ってるから……」

と、うつむきながら恥ずかしそうに言って、


俺の理性が保てたのはそこまでだった。
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