恋口の切りかた
「突然斬りつけられて、汗一つ見せないその余裕。
さすがは、殿の剣術指南役のお父上を持つだけある」

海野は冷たい視線を俺に向けたままでそんな讃辞を寄越して、


ニィッと嗤(わら)った。


「円士郎殿を暗殺しようなどと思う者があっても──これは、毒でも盛らぬ限りは難しいな」


「なんだと──?」


海野清十郎という男の口に上った、聞き捨てならない言葉に俺は顔から笑いを消して、

「例えば……の話だよ、円士郎殿」

清十郎はニヤニヤしたまま、そう言った。


口調や雰囲気は違うが──

この得体の知れなさは、確かにあの男を前にしているような錯覚を覚える。


俺は舌打ちして、飛ばされた脇差しの落ちた先を眺めた。


「堀に落としやがって──俺の脇差し、どうしてくれるんだ?」

嫌味たっぷりに言ってやると、

「ああ──家来に探させて、いずれお返ししよう」

清十郎は涼しい声で答えた。

「その言葉、忘れんなよ?」

俺が睨みつけると、清十郎はぞっとするような笑いを見せて

「ご心配なく」

と言った。


……気に食わない野郎に違いねーと思っていたが、本当に気に食わない野郎だ!


俺は心の中で毒づいて、

この主の奇行に対しても何一つ制止の言葉を発しなかった、供の家来二人を見た。
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