恋口の切りかた
「エン……だと?」


首筋の感覚が消えて、清十郎の動きが止まった。

私は夢中でその腕から抜け出して、

提灯のそばに置いていた自分の木刀を拾い上げ、構えながら振り返った。


「エンって──円士郎殿か……?」


その場に立ち尽くして、清十郎は目を丸くして私を眺めていた。

「惚れてる相手って、兄の円士郎なのか?」

信じられないものを見るように大きく見開かれていた目が細められて、

くっくくく……と、清十郎は可笑しくて堪らないという様子で肩を揺らし始めた。

「おいおい……本気か……? まさかこんな──」

清十郎は笑い続けて、


私は彼に、肩に掛かっていた羽織を投げつけた。

「こういう人だとは思わなかった……!」

そう叫んで、提灯を手にして背を向けて、

「私が馬鹿でした! ここにはもう来ません……っ!」

止まらない涙を袖で拭いながら歩き出したら、

「そいつは──奪い甲斐があるな、留玖」

後ろからそんな声が聞こえた。
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