恋口の切りかた
「体格や膂力、剣速は明らかに貴様が上だろう。それで全く勝てないというのはな──」

鬼之介は眉根を寄せて、

「彼女はこちらの隙を神業のように正確に突いてくる。
思いきりのなさやためらいは、真っ先に彼女に見破られて突かれる隙となる。……そういうことじゃないのか」

「そうだな……」

己が留玖に対して大きく劣るわけではない。

己の自尊心を保つように俺は自分自身にそう言い聞かせてみたが、


否応なしに、嫌な現実を突きつけられた。


それは、未熟な俺が抱いている留玖への思いが、
俺にとっても彼女にとっても、剣の道を妨げるものとなっている──ということだった。


彼女への恋心を断つより他に、再び彼女と互角に剣を交えることなどできないのではないか?


そんな考えが頭をかすめて、

──馬鹿な!

俺は慌てて振り払った。


剣のために留玖を捨てるなど……できるわけがない。


そう思いながらも、一度浮かんだ考えはしこりのように俺の胸に残って

以降、この厄介なしこりは徐々に大きく成長し続けることになった。



「それで? 霊子とはうまくやってるのかよ?」

俺はにやつきながら鬼之介に尋ねた。

あれから、渡世人たちとの一件で行方知れずになったお玉という女の正体を説明して、

俺は霊子を鬼之介の世話係として長屋に送り込んでいた。
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