恋口の切りかた
俺が問うと、血色の悪い鬼之介の顔が輝きを放った気がした。

「おお! あの女、なかなか話がわかる者だったぞ!」

鬼之介は嬉しそうに、
いつも不健康で死にかけているような濁った目玉を生き生きとさせた。

「ボクの発明の話を熱心に聞いてくれて、カラクリの細かい仕組みにまで興味を持ってくれてな、素晴らしいと絶賛してくれた……!
あんなおなごは初めてだな!」

「そいつは良かったぜ」

ううむ、あまり色気のある展開にはなっていないような気がするが──奇人二人だからな。


お互いに気が合ったのなら、まずはめでたいと言うところだろう。


稽古を終えて帰っていく鬼之介と別れて、

俺は道場の隅のほうにちょこんと座って汗を拭っている留玖を見つめて、


──剣のために、彼女への心を消すことなどできるはずがない。


そう思って、

視線の中に自然とこもる熱を他の門弟たちに悟られないように
すぐに目を伏せて、道場を後にした。

留玖との関係が周囲に知れ渡れば何を言われるかわからないし、きっと彼女は傷つく。
そのくらいは、俺も心得ている。

何があっても彼女だけは守りたかった。



俺は屋敷を出て、夕暮れの町を「遊水」と落ち合うことになっている居店へと向かって、

既に水面下で海野清十郎が動いていることなど、まだ思いもしなかったのだが──


一人で酒を傾けながら遊水を待つ俺の前に、青い顔をした神崎帯刀が現れて、俺は事態の深刻さを知ることとなった。

「ここにいたか……!」

居店に飛び込んできて俺のもとに歩み寄る帯刀は、珍しく着流し姿で、

「今すぐ、一緒に役宅に来い……!」

何か切羽詰まった様子でそんなことを言ってきた。
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