恋口の切りかた
「何だァ? どうした?」

羽織に袴という与力の格好ではなく、目立たない着流しに身を包んだ帯刀に妙な気がしながら、俺は眉間に皺を作って、

「俺はここで人を待ってるんだよ」

「その相手はひょっとして……あの金の髪の男か?」

帯刀の口からは遊水のことを指す言葉が飛び出した。

「そうだが……」

「貴様に訊きたい。貴様と一緒にいた、あの男は──」

「この俺がどうしたって?」

かかった声に、帯刀が弾かれたようにそちらを振り返り、俺は町人姿の御家老に向かって片手を挙げた。

「ちょうど良かった……」

帯刀は、他の客の間を縫って俺たちの席まで歩いてきた男のほうを見たまま、

「貴方もご一緒に来ていただきたい」

と、頭を下げた。


「────」


ただの町人に向かって礼を尽くした態度をとった帯刀を見て、

俺は緑色の瞳と無言で視線を交わし合った。


「火急のお話が。ここでは人目があります。宜しいですか?」


明らかに、金髪の青年に関する知識を得ている者の言葉だった。


伊羽青文は苦笑して、それからその白い顔から笑いを消し、

「宜しい。ならば参ろう」

と、鋭く細めた翡翠色の双眸で答えた。
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