恋口の切りかた
「大体、家中の人間であんたの行ってきた政治に関して不満を持ってる者はほとんどいないんですよ。
そりゃ、野心を抱いてる者にとっては邪魔かもしれないですけど……

俺たちみたいな人間にとっては、正面切って敵に回ることに対する恐怖のほうが強く働いて──不満が少ない分、闇討ちの下手人なんて失敗した時のことを考えて誰もやりたがりませんよ」

「五年前の雨宮様の事件は、家中の者の中に深く刻みつけられているからな」

帯刀も隼人の言葉に同意を示した。

「集められた者が皆若い剣士ばかりだったのは──血気に逸って言葉に従う者がいると踏んだからなのだろうが、逆効果だったな。
嫌でも五年前にまったく同様に下手人として使われ、悲惨な末路を辿った堀口文七郎のことが頭に浮かぶ」

そう言って、帯刀は隼人をギロリと睨んだ。

「海野清十郎の話が真実だということは、たった今知ったがな」

隼人が首をすくめて──帯刀は眉間に深い皺を作って溜息を吐いた。

「ともかく、危険と利益を天秤にかけてこういった話に率先して手を貸そうという者は、むしろそれなりの地位にあって権力の座を狙う立場にある連中だろう」


二人の話を聞いていた青文は声を立てて笑った。

「ま、そういうことにしておくとするかねェ」

うへえ、と隼人が頬を引きつらせた。


「それに──二人が海野に抱き込まれているなら、俺が神崎と秋山の話を信じて油断している、と思わせておいたほうが都合がいい。

信じた、ということにしておくさ」


青文は楽しそうににやついて、


「カンベンしてくださいよ」

隼人が泣きそうな声を出し、帯刀が物凄く嫌そうな顔になった。


俺は青文の顔を見て苦笑する。

口ではこんな軽口を叩いているが、どうやら青文もこの二人のことは信用している様子だった。
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