恋口の切りかた
そうして、

見事に咲き誇って花びらを降らせ続ける桜の大木を二人で振り返って、


「来年もまた、二人でここに来ような」


円士郎が言って、私はこくんと頷いて、



その約束をこの先、どんな思いで思い起こすことになるのか──



「来年も、再来年も、こうしてお前と桜を見たい」



彼がくれた言葉が、どれだけ悲しい響きでもって私を苦しめることになるのか──



私はわかっていなかった。




「完全に俺のものにはなってくれねえのか?」




この日、彼が必死になって「その先」を私から引き出そうとしていた瞬間が──

私と彼に残された、最後の機会だったのに、


私には、どうしてもその一言を口にすることができなかった……。




お城には、男装のままで上がることができて、

一生縁がないと思っていた場所は、何もかもが珍しくて、

それから私は毎日、寂しくてもいつも円士郎のことを思いながら、城の奥で武芸の指南をして過ごして──



信じがたいその運命が訪れたのは、

父上が江戸から戻った四月のことだった。
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