恋口の切りかた
「いや……やだ……」

留玖が天井を見たまま首を振った。

「やだぁ……」

闇の中、光るものが止めどもなくその頬を滑り落ちていくのが見えた。

「私……私、お殿様の側室になんてなりたくないよ……私は──」

細い腕が、彷徨うように俺のほうへと伸びてきて、

俺はその手を握った。




「私はずっと──エンのそばにいたかったのに──」




感情がこみ上げた。




「俺だって──ずっと一緒にいたかった──」




暗闇の中で横たわる彼女の体を抱きしめて、唇を吸って──


「ごめんな、留玖」


俺は泣き続ける少女の耳元で謝った。


「奥への出仕なんてさせなければ良かったのにな」

「やだ……やだよ、エン……離れたくない……」


泣いてそう言う彼女としばらく抱き合って、


「いっそ……二人でこのまま屋敷を出て、駆け落ちでもするか」


俺は細い肩に手を回したまま言った。


「それとも、来世で結ばれることを願って心中でもするか」
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