恋口の切りかた
奥に聞こえてきた噂によると、

どうも、お殿様の留守中に勝手に税を吊り上げたことで──

と言うより、勝手に青文を失脚させたことでお殿様が激怒して、重臣との間でごたごたが起きているのだそうだ。

私は初めて知ったのだけれど、
お殿様は青文のことをかなり信頼していて、彼の手腕を認めて大切にしていたようだった。

お殿様は直ちに青文の謹慎を解いて、城に復帰させようとしたようだけれど、

海野清十郎たちが、覆面の下をお殿様の御前で改めるまでは認められないと猛反発しているらしい。

お殿様はお殿様で、そんな無礼は許さないと言い張って──


──結局、膠着状態になっているのだそうだ。


私がお殿様の御前に呼ばれたのは、月が変わった五月のことだった。


お城の間取りはさっぱりわからなくて、奥女中に連れられてどこをどう歩いたのか、

やがて見たこともないような大広間に通されて、畳の上で頭を伏せて待っていたら


ふう、と言う溜息が横から聞こえて、私は横目でちらっとそっちを見た。


あれっ? と思った。

私は平伏していたのだけれど、そこには奥でよく見かけた別式女のような、男装した女の子が普通に立っていて、


あれれ? かしこまらなくてもいいのかな? と私は頭を上げた。
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