恋口の切りかた
再び部屋に戻っても、
俺は親父殿の顔を見ることができず、

視線を畳に落としたまま、唇を噛みしめた。


「それで、私からもお話が」

と、横で青文が親父殿に向かって口を開いた。

「秋山隼人が、謀反に荷担した罪で切腹させられたことについてなのですが……」

青文の口にした内容に、俺は顔を上げた。

うむ、と親父殿が頷いて、

「宗助から話を聞いたが、秋山は闇鴉の一味の者を斬り殺しておるのだそうだな。

だとするならば──海野に化けた夜叉之助が、報復としてやったことか」


俺ははっとした。


そうか──

清十郎の正体が闇鴉の一味の首領だとすると、隼人の切腹もそういうことになるのだ。


俺たちは、秋山邸に出入りしていた殺し屋を目撃したことで、
隼人への報復の手段を、直接的に隼人の命を狙うものだと思いこんでいた。


まさか連中が、こんな手段で隼人を葬るとは──


青文は頷いて、

「夜叉之助はそのつもりでしょうな。
ですが──秋山の死には、それだけではない別の意味もあります」

そんなことを言い出した。


別の意味……だと?


眉間に皺を作った俺の前で、青文は親父殿に向かって

「秋山は、十一年前の家中の事件について調べていたのですよ」

と、言った。
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